希望。
僕はワインが好きだ。
ウイスキーも好きだがそれと同様、知れば知るほどワインが好きになる。
僕はワインを好きになったきっかけ。
それは1997年のことである。
当時、僕は某音楽事務所にいて浅田祐介というアーティストのマネジメントをしていた。その祐介の仕事で僕らは1週間ほどN.Yに行くことになった。
現地で世界的なアーティスト、ナイル・ロジャースとの共同作業も順調に終わり、さあ明日が帰国という夜だった。全体の制作担当の金橋さんが「今夜良かったら僕の部屋で飲みませんか?」と言ってくださったので僕らは遠慮なく喜んでうかがうことにした。
夜、部屋に伺うとすでに金橋さんは赤ワインを飲み始めていた。
「さっきこのワインとグラスを買ってきたんです。日本じゃなかなか手に入らないワインなんだ。さあ飲もう」と言う金橋さんの傍らにはワイン2ケースとグラス4つがあった。そう、金橋さんはかなりのワイン愛好家だったのだ。
その頃の僕はワインなんてガブ飲みするだけで知識もなく味も何も分からぬ男だったが、その時のワインの味はもう衝撃なんてもんじゃない、あまりにも美味しくて美味しくて!
その僕の様子を見て金橋さんが「じゃあ1本日本に持って帰りなよ」と言ってくれたので僕はこれまた遠慮無く頂いてしまった。
日本に帰って、僕はワインの本を数冊買い、事あるごとにワインを飲みまくった。
今から思えばその飲み方は上辺だけ知ったかぶった嫌なやつの飲み方そのものだったが、まさかそれから11年後にワインをサーヴィスする仕事をしているなんてその時はこれっぽっちも思っていなかったなあ。
しかしいくら飲んでもあのN.Yのワインの衝撃は越えられないんです。
恐らく、あの時のシチュエーション全て含めて、あの味になったんだと思う。
時は流れて。
金橋さんは音楽業界を辞められて、現在はなんと!長野県でワインを造っています!!
「ファンキー・シャトー」というワイナリーです。
なんて最高な男だろう!
僕はそれを昨年知ってすぐに金橋さんに連絡しました。
「いつでもおいで。歓迎します」と言ってくれました。
僕に本当に美味しいワインを教えてくれた先輩。
ワインだけじゃなく、生き方も格好良すぎるだろ、金橋さん。
1997年、N.Yで金橋さんに飲ませていただいたワインはフランス・ブルゴーニュの有名な村の極上ピノ・ノワールでした。
今年の春に「ファンキー・シャトー」は自社栽培のピノ・ノワール種から初めて出荷したらしいです。
来年、行きますね。絶対に、行く。
『たとえ明日世界が滅びようとも、私はリンゴの木を植えよう』
マルチン・ルター